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靴は捨ててもいい? 裸足は効果的との研究結果が続々と半年で足の力が150%越にも
ナショナルジオグラフィック日本語版 2024.07.13
靴を捨ててもいい? 「裸足は効果的」との研究が続々と発表される
6カ月のミニマリストシューズで足の力が平均57.4%向上する
「自然な足の動き方であれば、けがが減り、足がもっと強くなるのでは」という考え方は長年、ランニングやウオーキングをする人を魅了してきた。メキシコの裸足の長距離ランナーたちを描いた本『BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族”』が出版され(編注:米国で2009年5月、日本語翻訳版は2010年2月に発刊)、裸足で暮らすミニマリストのライフスタイルが世界的に大きな関心を呼んだとき、この風潮はさらに強まった。(参考記事:「裸足で走る方が足への負担は軽い」)
それから10年以上が経った今でも、裸足で過ごすこと、あるいはミニマリストシューズを履くことは、足の力の回復や筋肉量の増加、歩行の改善に効果的だとする研究が増え続けている。2021年に学術誌「Scientific Reports」に掲載された研究によると、ミニマリストシューズを履いた被験者は、6カ月間で足の力が平均で57.4%向上したという。ミニマリストシューズによってバランスの向上や転倒リスクの減少が示された研究もある。
「裸足になることは、特に子どもにとって大切です。地面の蹴り方は子どもの頃に確立されるからです」とガラハド・クラーク氏は言う。クラーク氏は、英国の老舗靴メーカーの7代目であり、ミニマリストシューズのブランド「Vivobarefoot(ビボベアフット)」の創業者だ。
「人の足は実はとても丈夫で弾力性があり、いろんな要求に応えられるようになっています。でも、本来の使い方がされていません」と、英ロンドンに拠点を置く足の専門医(足病医)であるリーナ・ハリス氏は指摘する。「人間の足には33個の関節があって、3つの面で動くようになっています。つまり、歩く地面の状況に合わせて形を変えられるのです」(参考記事:「岩山を登り断崖を横断 規格外のウルトラマラソン」)
しかし、現代の靴では自然な動きが制限され、歩き方や足の構造にまで影響を及ぼしている。
「現代の靴は足先が細くなっているものが多く、足指がぎゅっと締め付けられて、しっかり踏み込んだり指を動かしたりできません。そのため、足の筋肉もうまく動かせなくなっています」とハリス氏は説明する。
また、靴のミッドソールにはクッション性があるので、感覚が鈍り、足裏で地面を感じにくくなっているという。それが原因で姿勢が悪くなり、やがてバランス感覚が低下し、さらには足裏のアーチが崩れて筋骨格系の問題に発展する場合もある。(参考記事:「シンデレラのガラス靴、ヒール高は1.3cmまで」)
現代の靴は、クッション性のある厚い発泡素材を使い、足先は細く、かかとが高い。一方、ミニマリストシューズは、柔軟性のある薄いアウトソールに、足指を広げられる幅広の足先、裸足のときのようにかかととつま先の高さが同じになるゼロドロップ・デザインを採用している。
裸足の運動で注意すべきこと
裸足での運動に関する研究には今後期待が持てるが、靴を全部捨ててしまうのはまだやめておこう。「急に裸足に変えるのは、けがのもとです」と、米ネバダ大学ラスベガス校の身体運動学および生体力学の教授であるジョン・マーサー氏は指摘する。
人の足はクッション性のある靴に順応してしまい、本来持っていた強さの一部を失っている。加えて、凹凸があって柔らかくない地面に過敏に反応する人も多い(砂利道を歩くことを考えてみるといい)。どこでも裸足で歩くとなると、痛い思いをするかもしれない。(参考記事:「人間は4万年前から靴を履いていたことが判明」
要するに、靴を脱ぎ捨てたばかりの足でジョギングに出かけるのは止めよう、という話だ。「長いこと三角巾で吊っていた腕、あるいはギプスをはめていた腕を想像してください」とクラーク氏は説明する。「三角巾やギプスを外して、すぐにテニスの試合をするようなものです。そんなことをしたら当然、腕を痛めるでしょう」
急に裸足に変えると、使っていなかった筋肉や腱(けん)に負荷をかけ過ぎてしまい、疲労骨折や足底筋膜炎、アキレス腱炎を起こしかねない。「少しずつ慣らすようにすること」とマーサー氏は助言する。
まず、家の中や家の周りの、地表が柔らかな場所でウオーキングしてみよう。次に、家の近所を少し歩いてみる。毎週少しずつ、歩く距離をゆっくりと延ばしていく。「もう十分歩いたときは、足が教えてくれます」とハリス氏は言う。マーサー氏も「鋭い痛みがあったら止めるように」とアドバイスする。 (参考記事:「米国人の家に招かれたら、靴は脱ぐ? 脱がない? 専門家の見解は」)
ミニマリストシューズを履くことで、裸足生活への移行がスムーズになる場合がある。ただし、履き始めのころは、これまでに試した靴とは感覚が違うかもしれない。
「足先に余裕があるので、靴が大きすぎると感じると思います」とハリス氏は言う。履いているうちになじんでくるはずだ。足裏で感じる地面の感触が全然違って、いつもより早く足の疲れを感じるかもしれない。「突起のあるマッサージボールで神経受容体を刺激するとよい」とハリス氏は助言する。
裸足で歩く機会が増えることで、足が鍛えられるかもしれない。とはいえ、流行している他のフィットネスと同様、裸足での運動は万人に適しているわけではない。シューズの選び方ひとつでけがのリスクが変わるといった確固たるデータがあるわけでもない。
ミニマリストシューズからクッション性を最大限に高めたスーパーシューズまで、あらゆるシューズを研究したマーサー氏によれば、「自分に合った方法でやることがポイントです」という。「ある人にとってはすごく良い方法でも、別の人にとっては最悪という場合もあります。その理由はまだ充分には解明されていません。今なお、探求しているところです」
自分自身も ベアフットシューズに履き替えた時期があり、足がついていけずに痛めた時がある。
ベアフットシューズのように足に負担が掛かるシューズは 最初は クッション性のあるシューズと交互に履くことが大事だと経験した。